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広州のコンクール

7/29に広東省広州市で中国楽器のコンクールがありました

私達はずっと広州コンクールと呼んでましたが

正式には香港國際藝壇主催、第6届中國器楽賽

2年おきに開催されて第5回は大阪だったので

参加された方もたくさんいらっしゃるのでしょうね

その頃黄山二胡楽団はまだ十数名でこじんまり練習してました(笑)

2年後にコンクールに出てるなんて思ってもみなかった頃です

中国でのコンクールがどんな様子だったのか?

団員の方が現地でリアルな感想を熱い文章に込めてくれましたので

ご紹介します

今回のコンクールで、体験できたこと、学んだことはとても大きい。 個人的に3つ挙げさせてもらうなら、 まず実感したのは「練習はうそをつかない」ということ、

聴衆と審査員の心を掴むには 「奏者が演奏を楽しむ」ということ、

最後は「先生の指導を心から信じる」ということだ。 コンクール2カ月ほど前からメンバーの練習会が始まり、曲にさらなる表現力をつける為に細かい修正が入った。 それがクリアできる度に曲に躍動感と深みが加わり、完成度が上がっていくのがわかる。

甘先生は、上手く弾けると必ず笑顔で 金賞!! 本番でこれくらい弾けたら金賞取れるね! と言って、私たちのモチベーションを上げてくれた。 一番最後のトレモロが終わると、全員で一斉に右手を上げてくるんと回す可愛いポーズまで加わり(^^) いざ広州に行く頃には志が高くなり、絶対に金賞を取って帰りたい!!と強く思うようになった。 私たちは大きな夢を持って、無事に広州ホテルに到着。

翌日の開会式に向けて甘先生の部屋で全員で何度もリハーサルを繰り返した。 一曲弾くごとに緊張が高まってくる。

無理もない。ものすごい数の参加者がコンクール会場となる、このホテルに滞在しているのだ。 廊下を歩くだけで、とんでもなく美しい音色があちこちから聞こえてくる。

本番直前まで弾き込むのだろう。熱気がこちらにまで伝わってくる。 当日は朝の8時過ぎから開会式が始まった。

ホテルの大広間に参加者がびっしりだ。ホテル内の3会場で朝の9時から夜までずっとコンクールが続くのだ。 私たちの出番は最後。それが良いのかそうでないのかはわからない。

1つ分かっているのは、ずっと緊張感を持ち続けたまま夜まで過ごすのは相当な疲労に繋がるということ。 午前中は、開会式が終わったあとにそのまま会場に残り、参加者の演奏を聴くことにした。

私としては気分転換のつもりだった。が、、、 始まってすぐにうろたえてしまった。桁違いのレベルの高さなのである。 私が悪うございました、と風呂敷抱えて逃げたくなるくらいにすごい演奏なのである。

誰か一人くらい、音を外してくれないか、一人くらい緊張して指が震えていないか、変なところをチェックしてしまう。

しかしそんな参加者は誰もいない。

一体どんな生き方をしたらその域まで辿り着けるのか、いや辿り着けるわけがないから、せめて何を食べているのか、どんな枕を使っているのか、何でもいいから教えて欲しい!中国語が話せたら!何であの時、中国語スクールをやめてしまったんだろう、と激しい後悔に襲われる。 極度の緊張の中で弾き終えて、安堵のあまり椅子に横たわり吐き気を催す参加者を目撃した。 午後に最終リハーサルをしたが、本番前という事もあり2回のみの音合わせになった。 こわい、こわくて仕方がない。だけどきっと大丈夫、という気持ちもある。 刻々と本番が迫ってくる。いよいよ会場入りする頃には肝がすわっていた。私には15人の仲間がいるのである。こんなに心強いことはない。 さぁ、みんなでステージにあがろう!!

黄山二胡楽団の名前が皆さんの記憶に刻まれますように! 本番を弾き終えた瞬間、会場から大きな拍手を浴びた。何と審査員まで拍手を送ってくれている。 朝からたくさんの演奏を聞いてきたが、物凄いハイレベルな演奏ばかりのなかで殆ど拍手が起きないコンクール会場である。

それなのに立ちあがり拍手をしてくれている人も見える。 夢なら覚めないで欲しいと思った。

本番でベストを尽くすのがどんなに難しい事か、ステージで演奏経験がある者なら誰もがよくわかっている。

ベストを尽くせないからこそベストに近い状態で演奏するために練習に練習を重ねるのである。

私自身もステージ演奏で毎回50~60%の力が出せれば上出来、終わるといつも後悔と反省の嵐が押し寄せる。 でも今回の演奏は奇跡が起きた。

演奏のラスト10秒ほどは目頭が熱くなり、皆との一体感に感激して身体が震える。 演奏を終えたあと、気のせいか甘先生の目が潤んでいるように見え、壇上から降りたときは皆、高揚感と感動と全てを出しきった満足感でとても良い表情をしていた。

私が映画監督ならその場でカメラを回し1人1人のアップを最高の角度から捉え、感動のドキュメンタリーを作るに違いない。 仲間だ、素晴らしい仲間に出会えた、とまた目頭が熱くなる。今も目をつぶるとあの時の皆の笑顔が甦ってくる。 幸福感のなかで、ホテルで皆と夕食を取りながら本番演奏の動画を見た。

いつもの練習よりずっと良いではないか。結果が大いに期待できる中での夕食となり、ここでも皆笑顔だ。 夕食後に、審査員の先生方の講義を2時間受けて(←中国語がわからないので眠気との闘いであった) そのあとは行ける人のみが甘先生と散歩へ。

夜11時近かったが、広州に来てから練習、練習、練習、音合わせ、音合わせ、音合わせ、本番、とホテルに缶詰めだったのである。何時だろうと外の空気を吸って、遙々やってきた広州の風を感じるのは嬉しいことだ。

私は行かずに部屋に戻ったが、そのお陰でリアルタイムでこの感想文が書けているので良しとしよう(^-^) 深夜1時頃に、皆が解放されて眠りにつく頃、甘先生より朗報が入る。

金賞が決まったと。1番望んでいたことが現実となった。

もうひとつ嬉しいおまけが付いた。明日の表彰式で、もう一度演奏をして下さい、と。 今回のコンクールは本当に大勢の参加者がいた。その中で、表彰式の演奏の依頼を受けたのはたったの6組である。

私たちの演奏が審査員の心を掴んだという事なのだろう。 もう1つ朗報がある。楽団の近藤都子さんはソロ演奏でもとても優秀な成績を残した。 当日の信じがたい過密スケジュールの中で見事にやり抜いた。

幸い私は本番に立ち会えた。彼女にしか出せない繊細で美しい音色が存在し、審査員も感銘を受けていた。 彼女はソロ演奏を終えたあと、駆け足で部屋に戻り、数分で合奏の衣装に着替え、また駆け足で合奏の本番会場へ。

おそらくソロ演奏の10数分後に合奏の本番も弾いていた。 私と同室の彼女は今、まるでお姫様のような顔をしてスヤスヤと寝息をたてている。かなりの疲労困憊であろう。

しかし、充実感に溢れているに違いない。良い夢を! 昨夜まで部屋で練習していた美しいチャルダッシュ、もう聴けないのは残念だけど。 明日はラスト1日、朝7時半から広州観光である。早く寝ないと灼熱の広州では体力がもたない。そろそろ寝なくては! 私事であるが今春、母が入院した。病室で見舞いの帰りに呼び止められ 美佐、この先どんなに辛くて悲しい事があっても音楽が必ずあなたを救ってくれるから、それを覚えておきなさい、と言った。 そうだね、覚えておくよ。ありがとう。Mom,I love you so much! そんなときが来たら、私を救ってくれるのはこの楽団そのものかもしれないなぁ、と思いながら眠りに就きます。 7月31日 AM2:38 広州ホテルにて

梅木美佐 記

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